【報告】10/31 第1回政策ラボ「高齢者の権利を守る社会へ―虐待防止と成年後見のこれから―」を開催
10月31日、LIN-Netは、第1回政策ラボ「高齢者の権利を守る社会へ―虐待防止と成年後見のこれから―」を江東区文化センターで開催しました。参加者は、オンラインを含めておよそ70人。

司会は、江東区議会議員のまにわ尚之(LIN-Net運営委員)
介護保険と車の両輪と言われる「成年後見制度」は、現在、見直しの議論が進行しています。また、高齢者虐待防止法に関しては運用の課題が多く指摘されています。これらを背景に制度への不信をあおる動きが、さまざまな自治体で見られ、問題になっています。権利擁護制度への信頼をどう積み重ねていくか、今後の福祉政策において問われています。
高齢者の権利擁護の現状と課題、今後の方向性を元成年後見制度使用促進専門官の川端伸子さん、弁護士の吉野智さん、元地域包括支援センター職員の下江佳代子さんの3人で深掘りしました。
前半は、川端さんによる基調講義。事例を紹介しながら、成年後見制度が身上配慮・財産管理を担う一方で、担い手不足、信用できない後見人などの課題が現場で顕在化していることを指摘されました。障害者権利条約での国連勧告等をふまえ、意思決定支援の原則や権限の必要最小化、終了可能性など民法見直しの論点も語られ、「適切な人に適切な支援ができていない」という課題が投げかけられました。
また、高齢者虐待防止法の運用に係る課題として、児童虐待防止法のような親権停止や接見禁止命令など司法の決定がないこと、高齢者虐待防止法以外の法律を援用して「やむを得ない措置」などを行っていることなど、積極的な権利擁護の活動に限界があることが語られました。積極的な介入ができない結果、関係機関や行政の職員が疲弊してしまい、支援の動きが鈍り、虐待が放置されてしまうという現実が示されました。

第2部は、前半の講義をふまえて、公開座談会。弁護士の吉野さんは、成年後見に係る支援の限界を問題提起しました。養護者支援(結果的に虐待をしてしまう人への支援)の困難さと守秘義務の関係を整理し、後見人と養護者が必然的にお互いの関係を悪化させてしまう、現行制度の課題を論じました。元地域包括支援センター職員の下江さんは、高齢者虐待防止法に強い権限がほとんどない以上、対話中心に支援を進めるしかないことを指摘。このことが職員の疲弊やときには命に係わるような支援の遅れにつながっていくため、法改正の必要性を強調しました。川端さんからは、「メディアで報道されている『介護殺人』 は事実上の虐待死」であるという深刻な指摘がありました。
質疑では、民法改正による後見終了の具体像や「在宅復帰を望む高齢者」への対応などが議論されました。
専門的で重い内容ではありましたが、今後も判断能力が低下した人の意思決定支援と支援チームの連携を中心に、制度改善と地域の権利擁護ネットワーク構築を進めることを確認しました。
