5/23 STOP!地方自治法「改正」案 院内集会 保坂展人世田谷区長の緊急発言
5/23のSTOP!地方自治法「改正」案 院内集会におけるLIN-Net世話人の保坂展人・世田谷区長の以下のように発言より。
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岸田首相の打ち出したイメージは、「聞く力」に象徴される謙虚な姿勢だったはず。地方自治法の審議を聞いていて、とうやら「聞かない姿勢」「打ち切る力」が顕著になってきたものと感じる。
5月23日、参議院議員会館講堂で「STOP 自治法改正」緊急集会が、岸本聡子杉並区長や小林伸行真鶴市長が参加し、加藤憲一小田原市長がメッセージを寄せた。また、首都圏を中心に多くの自治体議員が集まり、市民参加も含めて200人が集まった。以下、私の発言メモを記しておく。
自治法改正の話の始まりは、昨年12月に答申を受けた地方制度調査会答申であり、新型コロナ対応に追われた経験から、個別法のない事態で「国民の生命の保護のために特に必要な事態」において、閣議決定による国の地方自治体への「補充的指示」が出来るというもの。
ところが、総務委員会の審議では政府答弁などで、「想定出来ない事態を想定することは出来ない」という詭弁がまかり通り、いかなる事態や具体的な事象でそのような事態が出現するかの例示はなされていない。

私は、正直に3年間のコロナ対応で国とやりとりしてきたことを思い出して、「37・5度以上の熱が4日以上」を目安としてきた国の方針にこだわらず、「PCR検査体制の拡大」を打ち出し、高齢者施設のクラスター化を防止するために「無症状者への検査も含む高などの社会的検査」、コストとスピードを解決するために「検体プール方式の導入」の提案など、国の判断に先んじて自治体独自の判断を行い、厚生労働省と協議・交渉して実現してきた道のりをふりかえり、いったい何時、「補充的指示」が出来るのかを問うてきた。
国会審議において、国会答弁で繰り返されている『想定できないことは想定できない』などの詭弁を弄ぶ政府答弁だが、未来が予測出来ないのであれば、仮に4年前に自治法改正がなされていれば、どんな国の指示がありえたのかを例示することは可能であるはずだが、なされていない。
一方で、識者の中には安倍元首相の2020年2月「全国一斉学校休業」を打ち出したことは、法的根拠なき暴走だったとして、この法改正があったならば止めることが出来たはずだという意外な議論まで出てきているが、本当にそうだろうか。(5月18日朝日新聞オピニオン面・牧原出東京大学先端科学研究センター教授)
むしろ、法的根拠として「補充的指示」があれば、絶対服従の国の命令の法的根拠として使われた可能性の方が大きいのではないかと思う。
感染症危機や災害時が正面に掲げられて議論が始まった自治法改正だが、総務委員会の議論を聞いていると、これは個別法に「自治体への国の関与」が書かれていない無数の事態について、「自治体への国の特例的関与を包括法」ではないかと認識するようになった。
すなわち、コロナや災害は例示されているが、それは一部に過ぎず、はるかに範囲の広い緊急事態にあって、国が自治体を指揮命令することの出来る包括的「白紙委任法」なのではないかとの疑いが出てきた。
繰り返すが、コロナ禍の3年間、全国の地方自治体は国・厚労省の「通知」を軸に動いてきた。世田谷区としても、通知に含まれていない提案をして国と協議・交渉したものの「通知」を軸に公衆衛生政策を展開してきたことは、全国の自治体と同じである。
この自治法改正案には、国から地方への一方的な指示が折り込まれているのに対して、自治体側からの逆方向の積極的提案権の行使などは議論もそれていない。今回のコロナ禍の3年間でも、私たちは国に提案して、実現させてきた。
そうした「共に危機にあたって智恵を出し,力を合わせる」という協力関係は機能したと考えているが、「地方自治法改正案」は、その土台をぶちこわすものである。
5月28日中の採決を譲れないとしている与党、「事態対処法」に書き込まれていない事項が本法案の対象となるのかも答弁不能なままでは審議を終わるわけにはいかないという野党。緊迫したやりとりが続く。いったん、廃案にする以外にないと声をあげよう。
世田谷区長・保坂展人 (LIN-Net世話人)